6/26-30 yhs sub-play vol.11 『トライアル』
6/26-30 yhs sub-play vol.11 『トライアル』
葛木陽平は、ソファの上で目を覚ます。白を基調とした室内、テーブル、椅子、テレビ、雑誌、厳重に鍵の掛かった扉、時計を見ると 「9時2分」。頭には包帯が巻かれていて、少し痛む。何も思い出せない。テーブルの向こう側では、無精髭を生やした男がこちらを見て微笑んでいる。傍らの白衣を着た女に尋ねると、ここは未承認薬の臨床試験を行っている医療施設で、被験者として参加していた陽平は転んで頭を打ってしまったらしい。退院の日まで他の被験者達と過ごしていく陽平だったが、おかしい点に気付く。食事の制限がなければ、経過観察の採血もない。無精髭の男は毎日酒を飲んでいるし、他の被験者達の言動は曖昧なところが多い。何より、自分の退院予定日が分からない。何時、ここから出られるのか?何故、ここにいるのか?ここは、何処なのか?自分は、何者なのか?時計の針は 「9時2分」 を指したまま、動かない。記憶の欠片を繋いでいった先で、陽平は衝撃の光景を目の当たりにする……。「知らないままの方が幸せだなんて、そんな不幸せなことはない」